中崎タツヤという漫画家の脱力系ギャグマンガが、今改めて、面白い。長い年月に亘り、地味に変な話を展開してきた「じみへん」を始めとして、社会のいろいろなことや人をかなりずれた感覚で風刺的に笑いに昇華させる漫画は切り口が違って、もはや清々しい。
そして、今では、この作家、出来た原稿を出版社に送るや否や燃やしてしまうという究極のミニマリストでもある。断捨離に目覚めた人よ、電子書籍でも購入し、勉強されたし。
もたない男
もたない男 (新潮文庫)
命と金と妻以外、なんでも捨てる!人気漫画『じみへん』作者は究極の断捨離オトコだった。空き部屋のような仕事場、妻を説き伏せ捨てたソファ、燃やしたらスッキリした大量の漫画原稿。憧れは、マザー・テレサのようなシンプルな生き方。けれど物欲も人一倍強く、好みの茶碗を求めて地方まで出かけたり…。極端すぎる捨て方に笑いが止まらない、異才の漫画家が放つエッセイ集。
内容
何が凄いと言ったら、今でもこそ、ミニマリストが話題となっているが、それよりもかなり前から、断捨離を完全にしていた漫画家がいたことである。読めば、わかりますが、そんじょそこらのレベルの断捨離というかミニマリストではないですね。とにかく、捨てたい人。勉強になりますよ。
中崎タツヤ
1955(昭和30)年、愛媛県生れ。’78年、「無題」で漫画家デビュー。’92(平成4)年、『問題サラリーMAN』で文藝春秋漫画賞受賞。’89年、「ビッグコミックスピリッツ」で『じみへん』の連載を開始、現在も続いている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。
著者略歴
問題サラリーman 6
問題サラリーman 6 (ニチブンコミックス)
20世紀のじみへん (小学館文庫 なF 1)
20世紀のじみへん (小学館文庫 なF 1)
20世紀の10年分を厳選!濃厚じみへん!
2003年に発行し好評だった『よりぬきじみへん20世紀版』の文庫化で、
連載初期からの10年分をギュッとよりぬいた傑作選となります。
文庫化にあたり、『じみへん倫理教室』の執筆者で
福井県初代授業名人の高校教師・南部ヤスヒロ氏が解説を担当!【編集担当からのおすすめ情報】
商品内容
ビッグコミックスピリッツにて1989年から今もなお連載中の15コマギャグ『じみへん』がついに文庫になります。
通勤・旅行・出張・就寝時のお供にしやすいコンパクトサイズ。年ごとに編纂してますので、ついでにご自分の20世紀を振り返るなんて読み方も楽しめます!
第20回手塚治虫文化賞短編部門受賞:2016年
なんと、中崎タツヤは2016年に第20回手塚治虫文化賞短編部門で受賞をしていますね。世間にかなり深く認められているマンガなのであります。
親との同居問題に悩む宇宙人と人間の恋人。わけありの女ばかりを薦めるポン引き。炊きたてご飯を土足で踏ませるストレス解消教室……。「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)の片隅で1989年から昨年まで、「地味に変な笑い」を提供してきた。
1955年、愛媛県生まれ。1978年デビュー。食べ物、ギャンブル、セックスなど、下世話なネタをズレた笑いへ転化させる探究はいつしか宗教的境地へ。徹底して物を持たない生活をし、原稿は焼却、完結と同時に断筆。受賞の言葉も「じみへん」節全開だ。
「認められて喜ぶ自分がいる。それを見てバカじゃねーのと思う自分がいて。面倒くさい。というのが、賞に対する気持ちの説明としてしっくりくる」
(2016年4月27日付、朝日新聞朝刊)
賞が苦手。理由を考えてみた。
子供のころに否定されて育って承認欲求が反発に変わったような気がする。自分を正当化するために、自分を認めない親を否定する。嫌なところばかりを探す。そして認められてたまるかという子供と親の関係になる。
親離れするとその関係は個人(私)と社会(世間)に移行して、私は世間の嫌なところばかりを見て、そんなくだらない世間に認められてたまるかという反発をする。他人が敵にしか見えない人間のでき上がりですね。
とはいうものの反発だけかというとそんなことはないわけです。秩序を守りますし。気持ちの一番の根っこには認められたい欲求があるわけです。認められて喜ぶ自分がいる。それを見てバカじゃねーのと思う自分がいて。面倒くさい。というのが、賞に対する気持ちの説明としてしっくりくる。
(2016年の贈賞式小冊子から)
出典:https://www.asahi.com/special/tezuka-anniv20th/2016/
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