『ドライブ・マイ・カー』の映画化
主人公の家福に、西島秀俊を持ってきたのはそれなりに良かったのではないか。村上春樹のこの短編小説『ドライブ・マイ・カー』が出たのは2,013年だが、やはり、この役は西島秀俊しかなかったような気がする。妻を亡くした男の喪失感をどこまで演技が出来ているかに注目したい。
そして、一番重要になるのが、家福の愛車を運転するドライバー「渡利みさき」役になる「三浦透子」の存在であろう。このハードボイルドな女性ドライバーをどこまでこなせるか、ここにも注目したい。かつて昔、CMの二代目なっちゃんであった三浦透子。その後、色々な映画やドラマで貴重な脇役としての活躍をしていたが、今回の準主役をどう料理するか、だね。
まあ、そんなことを言うと、家福の亡くなった妻と寝ていた男の役を岡田将生がするというのもベスト配役であることは間違いないね。彼の女性との関係のイメージが、映画『伊藤くん A to E』と絡んでくるからだ。
つまり、この映画化は、まずは、配役において最初から成功していると予感できるのである。
女のいない男たち
この映画化される『ドライブ・マイ・カー』も収納されている短編集『女のいない男たち』は、村上春樹の短編小説集の中でも近時のもので、それなりに、村上春樹ワールドで面白い。なかでも、この『ドライブ・マイ・カー』は村上春樹ならではのハードボイルド小説の体裁もあり、登場人物はたった4人であるが、面白い展開になっている。
「女の人にはそういうところがあるんです」とみさきは付け加えた。
言葉は浮かんでこなかった。だから家福は沈黙を守った。
「そういうのって、病のようなものなんです、家福さん。考えてどうなるものでもありません。私の父が私たちを捨てていったのも、母親が私をとことん痛めつけたのも、みんな病がやったことです。頭で考えても仕方ありません。こちらでやりくりして、吞み込んで、ただ、やっていくしかないんです」
「そして僕らは演技をする」と家福は言った。
「そういうことだと思います。多かれ少なかれ」
家福は革のシートに深く身を沈め、目を閉じて神経をひとつに集中し、彼女がおこなうシフトチェンジのタイミングを感じ取ろうと努めた。
女のいない男たち「ドライブ・マイ・カー」P.62
女のいない男たち (文春文庫)
私のブログ『映画小説漫画MonoMania』
私の別のブログである『映画小説漫画MonoMania』にも、この小説『女のいない男たち』の紹介記事があります。ご参考まで。
コメント