暗殺者

小説

日本の今の世の中に、暗殺を商売にしている人が果たしているのだろうか?

良く聞く噂話では、新宿歌舞伎町には、中国マフィアや中南米マフィアが多く入ってきていて、ほんの数万円でも人を殺す仕事を請け負っているというあたりの話が聞こえてくる。

だが、俺が知りたいのは、日本人で、暗殺を生業にして生きている人がいるか、どうかの問いに対する答え、なのだ。

ヤクザの世界では、ヒットマンがいるのは間違いない。しかし、それは、ヤクザという組に所属する構成員というサラリーマン的な存在で、ヒットマンを職業としている訳ではない。

俺が知りたいのは、ハリウッド映画や近頃の日本の漫画に見られる暗殺者が本当にいるのか、なのである。

そう、「ファブル」や「バイオレンスアクション」などの漫画に、簡単に人を殺める主人公達のような輩がいるのか、なのである。近頃の漫画は、暗殺者に関しても、日常生活の延長にあるような人間が主役になっている。通常人と暗殺者の境目が希薄なのだ。ゴルゴ13の世界ではないのだ。

こんな世界が、日本の裏社会にあるのだろうか?

そこが、今一番知りたいことなのだ。

最近驚いたことがあった。都内のある病院に義母が入院し、そこの二人部屋にいた年老いた女性の娘がその母親に話をしていた内容が凄かった。

カーテンで仕切られているから、顔は見えない。娘が母親に言っていることが尋常ではなかった。

「あいつは、何もしない。私だけだ。私だけが父親もあんたも助けている。あいつは姉らしいことをひとつもしない。あんたがこうやって入院してても、見舞いにも来ないし、何もしない。」

「あいつは曲がりなりにも医者なんだ。あいつに金を渡す必要はない。私が面倒みるから、年金もその他の生活費も家の管理も、私に全て任せればいいんだよ。」

母親は弱い小さな声で、「そうは言っても、お父さんの気持ちも・・・」どうのうこうのと言うのだが、最後のあたりの言葉は消え行ってしまう。

「今はさ、かなり安い金額で、依頼すれば、人も殺せるんだよ。アイツをばらすのだって、あっという間さ。数十万出せば、すぐに、やってくれるんだよ。」

また、母親が消え入りそうな声で答えるも、何を言っているのか聞き取れない。

「あたしはさ、下のコンビニに行ってくるからさ。よく考えておいてよ。」

と女はカーテンを開け、病室を出て行った。

俺は妻に目配せをして、すぐに後を追った。気づかれないように。

病室を出て、エレベーターに向かう廊下を見ると、後姿が小太りで髪の毛にはパーマがかかり、黒のライダーパンツとスタジャンを着ている女がガニ股でドカドカと歩いていた。40前後の女だろう。そして、あっという間にエレベーターに乗り、消えてしまった。

カーテン越しに聞いた話の主は、やはり、そういう風体をした女だった。そして、とても、ザラザラとした嫌な感じが口に中に残った。

多分であるが、実の母に対してあんな感じで接触する女。小さい時から今まで、ああいうように話をしても生きてこれた女。どういう生い立ちなんだ。どういう家に生まれたんだ。

オヤジが組長?姉が女医?母親は組長の妻。極妻?そんな図式が頭の中に浮かんでくる。

日常会話で、こんな言葉を発するか?映画オタク?小説オタク?しかし、あの後姿のふてぶてしさは、そういう人間達とはかけ離れている感じがする。

獰猛なイノシシ🐗のようだ。ただ、ただ、ガサツに真直ぐだ。善とか悪の観念もあまりなさそうだ。周りに誰がいても、構わない。自分の言いたいことを言う。

彼女の中には、アサシン(暗殺者)が間違いなく、存在する。

そういうこともあって、近頃、この世の中には、きっと、そういう商売が存在しているのではないかと、感じ始めている。

職業としてのアサシン、スナイパー、殺し屋、暗殺者。どんな人間がどこにいるのだろうか。自分の身近に実はいるのかもしれない。

そして、その費用や金額を決めるスポンサーは誰なのか。自殺という形で死んだことになっている人たちの中の何人かは、殺されている可能性だって、ある。

闇の世界はどこにある。そんな話も、これから、切れ切れに書き留めていくつもりである。繋げると、それなりの現実めいた小説になるような。

まずは、予告。

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