きみの瞳が問いかけている

きみの瞳が問いかけている

久しぶりに、DVDで、『きみの瞳が問いかけている』を家で観て、やはりこの映画に感銘を受けたので、その気持ちは記録に残しておいた方が良いと思って、再度、感想を書いてしまった俺。



寡黙さがたまらない横浜流星

横浜流星が演じる篠崎・アントニオ・塁という主人公である人物の生い立ちと背景から、寡黙で静かな男になっていくのは必然だとしても、やはり、今までに色々な役をしてきた彼であるが、横浜流星は沈黙と少ない言葉の登場人物が本当に似合っている。今回のこの映画『きみの瞳が問いかけている』で、彼が喋らなく聞き役が多いのであるが、その間(マ)の彼の顔の表情での演技が素晴らしかったと思う。この映画は、全くハードボイルドでもなくむしろ恋愛映画なのであるが、彼の存在自体は、探偵ハードボイルド映画やスパイ映画の主人公よりも、極めて、ストイックでハードボイルドであったのだ。そして、そのハードボイルドさを彼は、言葉少なに、顔や体で表現してくれていた。多分、私が彼を俳優として推しているところの重要な一つに、そこがあるような気がする。弱弱しいような優しいような高音ボイスでボロッと喋った時のその表情に、この映画で言うと、孤独や罪の意識やストイックに許しを乞う気持ちなど全てが上手く凝縮されていた感じがするのだ。そういう観点から再度観ると、彼の俳優としての良さというか凄さが本当に感じられるのだ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

「家族はいない」と裏の犯罪組織集団で悪いことをさせられていた時とか、ハングレ集団の連中と地下賭け拳闘試合をせざるを得ない時とか、真っ当に生きようとしているのにその方向に行こうとしても戻されてしまう流れを感じている時とか。抗うことがかなり難しい局面で死も常に頭の中にあって、そんんなとても難しい塁の心を横浜流星は、その存在自体で、表現出来ている。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

直接手を下したわけでもないのに罪を犯したことになり刑務所から出所した後も、目の前で灯油をかぶり投身自殺した被害者の男の妻と娘と最後に判ってくる失明した明香里と事故死した両親への罪をどう償えば良いのか葛藤する横浜流星。この映画は彼でなくては、やはり、絵にならなかったのは間違いないな。とても、深くて重いのだ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

それは、人の心を暗くもさせ、寡黙にもさせる。罪に赦しがあって、そこから、人は生きていくことを更に許されるのか?

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

一人、闘いに臨む男の哀愁。見つめる瞳が虚空を彷徨う。言葉は要らない。そこにあるのは、存在自体が醸し出す彼の心の中だ。ハードボイルド小説や映画には、饒舌さは時として不要だ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

野獣になる時の横浜流星

本当に強いヤツは、決して、強さを見せない。ここぞという時にしか、その野獣さを見せない。それが、武士道のマインドなのである。キックボクシングという世界で、アンダーグランドと表の世界の2つのシーンで空手で培った身体能力を武器に、ボクサーであるシーンを演じ切った横浜流星。空手でトップを取ったことのある男は、寡黙に、体を鍛えていた。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

思う人を守るために、野獣に身を落としていく男の心の機微が、横浜流星の今までに鍛えられてきた体の中で、揺れ動く。決して何をしても罪を赦してもらえないだろうと思いつつも、金を得て少しでも幸せになって欲しいと思う相手に渡し消えて二度と会うことはないと決心をした男の姿。敢えて戦いの場に自分を置くことで、死ぬことも厭わない自分。それを誰がメランコリックと言えるであろうか。横浜流星は、主人公の塁の心象風景を野獣の闘いの中で、見せつけてくれた。悪のハングレ集団の汚い愚弄すべき企みの中でも、彼は、守るべき自分なりの矜持を貫いたのである。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

悪はどこまでもついてくる。一度、その悪に取り込まれた男は、その悪から抜け出すためには、死を覚悟し自分も敢えて野獣になるしかないのだ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

脇役達の存在の大きさ:その正義と悪

この映画、脇役達を悪と正義に上手く配置させているし、それぞれがその役にあった良き演技をしている。その対比によって、塁と明香里の純愛が更に美しくなっていく。

悪側としては、まず、バイプレイヤーの野間口徹が女性や障害者の敵を演じている。これはナカナカ驚いた。今までの彼にはあり得なかった役柄だからだ。流石である。ラッパーの般若も怖かった。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

だが、悪の一番は彼だろう。ハングレ集団「ウロボロス」のリーダー役であった町田啓太だ。彼は、悪の体現がしっかり出来ており、この映画の重要なキイパースンであった。心のない悪を最後まで演じきったことで、対比したカタチで、塁の正義や善や優しさや人への信頼の崇高さを私達にかなり感じさせてくれた。映画の中でこのような悪の集団が最後まで叩かれないことには不満はあったものの。それが世の常かもしれない。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

そして、塁に希望の灯を燃やし続けてくれる人達の演技も良かった。

幼少の時、入水自殺しようとした母に連れられて海に入っていった塁は、自分だけ生き残ってしまった。そして、孤児院育ちとなる。彼を支える一人に孤児院のシスターがいる。風吹ジュンである。彼女のセリフがナカナカ良いのである。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

「あなたを赦していないのは、あなただけなのよ。周りの人は皆あなたを赦しているのよ。」この言葉が心に突き刺さる。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

大内キックボクシングジムのコーチ役のやべきょうすけも、とても、ハートの温かい男を演じてくれていた。生きていくことや人を信じることの意味を彼に託している部分もあった。それはジムの会長の田山涼成にも言えることであるが。

恋愛の中での横浜流星と吉高由里子

この映画の最初の横浜流星と吉高由里子の出逢いのシーンが良かったかもしれない。明香里が塁のいる駐車場の管理室を訪れて、それまでいたお爺さん管理人と間違えてドラマを一緒に見るというところから始まるのだが、この管理人室シーンが何度か繰り返されることで、障害者役である吉高由里子の何気ない嗅覚のことやセリフの自然さに、最初は驚いた横浜流星が少しづつ心を開いていく。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

この辺りに、この二人の出逢いがとても日常的にもあり得そうな話で、こういう二人が出逢えたことは良かったなと思わせてくれたところには、脚本家と監督に感謝したいところだ。愛の手前は、こんな風に、さり気ない日常的な時の積み重ねがいいところである。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

海は、塁にとっては自分の原点でもあり死のイメージもあり、明香里にとっては塁を恋人と思ったところであり生きていくために大事な場所でもある。最後はここで、「おかえり」と「ただいま」でハッピーエンドに終わるが、この映画『きみの瞳が問いかけている』は死で終わるのではなく、生き続けていくというエピローグで終わったことがこれも恋愛映画としては良かったと思うのである。明香里が塁に、もう一度生を与えてくれたことで。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員

顔の造形を手で感じるシーンがこの映画では多いが、その人の顔は見えないが心は良く見える。とても、孤独なのに優しい人だ。どんな顔をしているのだろう。出逢ってから長い間触ることもなく、会話で少しづつ、この人の心の純粋さを感じていた。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員

交通事故で失明する前まで美術大学で彫刻を専攻していた明香里。目が見えないからこそ、塁の顔の形をなぞるのであった。

目の手術に成功し彼が消えた後に、彼女は塁の顔の造形を思い出し、今度は彼の顔の彫刻を創ろうとするのだ。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員

そして、キスにも至る。少しづつ、恋人になっていく二人。二人には、幸せになって欲しいと思ってしまうシーンであるが、世の中、そんなに甘くない。だからこそ、純愛の極致か。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

目の見えない明香里に手術をして、光を取り戻すべきだと説得する塁。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

明香里の手術前に、病院で彼女に語りかける塁。この時には、塁の心の中には、明香里の元から消えることを決意しているのであった。死ぬか生きるか分からないアンダーグラウンドな決闘を前に。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

佐藤正午曰く、「冷めないスープはない」。愛は冷めるのが世の常でそれが人生であるというのであるが、この映画『きみの瞳が問いかけている』で監督他が言いたいことはその真逆かもしれなくて、冷めることのない愛もあるということなのかもしれない。真摯に人と人が出逢い愛のカタチになり、その愛が何の打算もないものならば、冷めないスープのような愛があるかもしれないという希望を描いているのだと思いたいね。そのくらいに、この映画での塁と明香里、横浜流星と吉高由里子には、永遠の愛を感じたね。たとえ、ファンタジーのような恋愛だと言われても、こういう愛が存在することを語りかけてくれた映画として、貴重だなと思うのである。この時代には。それで良いじゃないか。

この映画でのツール

昨日、作詞家松本隆の作詞家50年を祝ってのテレビが結構流れていた。ある音楽評論家が言っていたが、彼のヒットした歌の歌詞には必ずキイワードになるモノが書かれていると。キンキキッズの『ガラスの少年』ではガラス玉だし、寺尾聡の『ルビーの指輪』ではコートだし。

観て良かった映画でも、決まって、キイになるツール(道具)が配置される。この映画でもそうだったことを再度観てわかったりした。ピンクも入った赤のシーグラスと吉高由里子が良く口ずさむ「椰子の実」のオルゴールか。最後に、ワンちゃんの『すく』。目に障害のある人にとって大事な盲導犬。そして、どんなに時が経っても、すくは塁の体の匂いを覚えている。ある意味、この映画での一番のツールは、『匂い』だったかもしれない。

(C)2020「きみの瞳が問いかけている」製作委員会

Wall Art  Movie Posters and Prints Canvaspainting  Artwork  -60x90cm

こういう映画こそ、そのシーンのひとコマを家の壁に架けておくのもオツかなと思うので、この映画のキャンバスペインティングを少しだけ紹介しておきます。

すく:¥3,152。

篠崎・アントニオ・塁(横浜流星)が柏木明香里(吉高由里子)にプレゼントした子犬の名前は、アントニオが名付けた『すく』。すくすく育つようにとのことで。

おんぶ:¥3,037

足を怪我した吉高由里子を背負って彼女の自宅まで運んだのは、出逢って、まもなく。

この映画関連の今までの私の記事

自分でも知らなかったけど、既に4つも書いていたんだね。それ位、この映画『きみの瞳が問いかけている』が好きだったんだな。まあ、横浜流星と吉高由里子の二人が鉄板であったということもあるのだけど。それにしても、横浜流星の寡黙さは絵になるとしか、言いようがないね。再度観て、これは確信になったね。

「君の瞳が問いかけている」を本で読もう
公開されている映画『君の瞳が問いかけている』については、2つの文庫本が小説として出ている。横浜流星と吉高由里子最高の純愛映画。文庫本も揃えておくのも良し。
吉高由里子・横浜流星:君の瞳が問いかけている
吉高由里子シリーズの第2弾。祝、公開。『君の瞳が問いかけている』。久しぶりのラブストーリー映画出演の吉高由里子と横浜流星の孤独と鍛えられた肉体を観れると思うと、幸せですね。ベストな配役。この二人では、泣くしかない。
『君の瞳が問いかけている』を追いかけて:武道家編
横浜流星の武道家としてのレベルの高さを感じさせるニュースや情報が巷にまた流れ始めている。映画『君の瞳が問いかけている』での彼のキックボクサー映像予告が凄すぎる。横浜流星。優しいから強い。弱き人のために闘う。無償の愛。
きみの瞳が問いかけている
映画『きみの瞳が問いかけている』での画像(公式)だけ。それを見ることだけでも、今の彼への応援に繋がるはず。横浜流星。画像を見るだけで、その閉ざされた心の向こうにある真直ぐな純粋さが。映画と同じく、そこにあるのは祈り。救いに言葉はいらない。

もう一度観たければ

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フジ子さん

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