男の自画像ー柳沢きみお論(2)

哲学

柳沢きみおは凄い

柳沢きみおという漫画家について、前回、その存在を問うた。そして、改めて、記事を書く中で、自分は彼の凄さに改めて、ビックリした。彼の漫画の守備範囲の広さもそうだが、そのテーマの面白さと人生訓のような哲学が勉強できるのだ。読みながら、楽しみながら。そして、彼自身がどん底も味わっている。そんな柳沢きみおのかつての漫画すべての再リババルを私は今更に望むし、彼の新しい漫画を是非読みたい。

だからこそ、柳沢きみおをとにかく紹介していきたい。これからは、なるべく、漫画を1つ1つ丁寧に説明もしていくつもりだ。今回は、男の人生譚のような珠玉の作品「男の自画像」を紹介するつもりだ。読めば、きっと、きみおのウマ下手絵が病みつきになるぞ。

男の自画像

男の決意

30歳を過ぎてなおというよりも、40歳をまじかに控えた男が、自分の人生を模索する物語だ。かつては、東京セネタースのピッチャーだった並木雄二の物語。(なんか、この球団はヤクルトスワローズに似てるんだよな?)右ひじを痛めプロ野球球団から退団後、企業の課長として落ち着いた暮らしをしていた並木。妻がいて子供もいる幸せな家庭。しかし、並木は、今もひじを壊した最後のゲームの悪夢によくうなされていた。そんな時に、野球に挫折した仲間のアル中死の知らせ。並木は、心の奥底でくすぶっている何かへの焦燥感に気づく。そして、野球へのカムバックを決意する。ここから始まる物語だ。これだけでも、ステージが揃っただろ。人生にゼロから再挑戦する男の話だ。

並木のカムバックの決意と会社を辞めたことに怒る妻。子供を連れて家を出ていく。並木はそれでも、決意を変えない。少しずつ、肉体を取り戻していく。老化にめげずに。そして、かつてのバッテリー益山と恋人春江だけが心の支えだ。

男の挑戦

しかし、世の中はそんなに甘くない。恋人春江との別れ。ヒジの不調の再発。いくら体が戻ってきたとはいえ、6年ものブランクはでかい。ボールのスピードも1130キロとふるわない。これではプロにカムバックなど、とうてい夢なのか?並木と益山のバッテリーはすがる思いで、決め球のナックルと山なりのチェンジアップボールの完成を目指していく。そこに若い加賀というプロを目指す男と新しい恋人順子が関係してくる。順子は、死んだ元野球選手の恋人でもあった。

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なんとか、元いた球団のセネタースに戻ろうとする並木。球団コーチの木崎にピッチングを見てくれるように頼むが、何故か並木を憎む木崎に色々と邪魔される。(いるよな、世の中、こういうヤツが。だから、ドラマは面白いが、不愉快なコワルが本当に社会には多いよ。)なんとか、テスト生でセネタースに入った並木をこの木崎が今度は若い加賀と直接対決させ勝った方を入団させるという意地悪を仕掛けてくるのだ。

男の葛藤と友の人生

そして、並木はバッターの加賀になんとか勝ち、セネタースに入団できることになる。しかし、バッテリーだった益山は置いてきぼりにされた複雑な気持ちになる中、妻にも逃げられる。経営する焼鳥屋も廃業寸前。加賀の為に退団し益山の店で働いていた若い藤森もヤクザの道に行ってしまう。哀しいことに、ここにきて、同じ野球に挫折した仲間の中でも、選ばれし者と選ばれなかった者の人生の明と暗がはっきりと浮かぶ上がってくるのだ。このあたり、本当に、男の人生の現実を感じさせる展開だ。

男の激闘(投)

8年ぶりに1軍に返り咲いた並木。監督はつぶやく。「今日の試合は我々にとって人生のほんの一部に過ぎないが、彼にとっては彼の人生の宝に成りうるんだ」

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並木は最終回最後にナックルで打者を空振りにする。カムバック初登板。奇跡の完投勝利となる。そして、その後、並木はストッパーとして活躍するが、その期間は1年だけであった。並木は、あの若き加賀と最初で最後の闘いをする。ナックル、チェンジアップ、シュート。ヒジを痛めた並木のシュートがうなりをあげバッターのふところに飛び込んでいく。

並木の1年限りの成績は、6勝23セーブ6敗だった。並木はユニフォームを脱ぎ、セネタースのピッチングコーチとして第三の人生に向かうのだ。

並木の人生は、かっこいい。傷ついた男の矜持がそこにある。心に残ったおのれの夢にひたすら賭ける男の姿が結構感動させられる。幸せっていうのも、存外、自分の心にある隠してしまった夢をもう一度開いてみるところから始まるのかもしれないね。柳沢きみお、やるね。

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